「ある日、僕は」

ある日、僕は死んでしまった。
死ぬつもりはなかったんだけど。
なんか、死んでしまった。
目を覚ますとか、音がした方を見るとか、
そんな感じで、僕は死んでしまった。

僕が死ぬと、世界は、僕は存在していなかったことになっていた。
これはびっくりした。
僕の死を悲しむとか、僕がいなくなって困るとか、そういうことは一切なかった。
もともと僕が存在していなかったことになっているから。
僕が抜けたバイトのシフトの穴とか、もうすぐ返却期限がくるレンタルＤＶＤとか、
そのへんは、なんかうまいことなっていた。

そうか。
死んだらこうなるんだ。
生きているときには想像もしなかった。

こうなるんだ。
そうかそうか。

自分が死んだ後の世界は、自分がもともと存在していなかったことになるって知ってたら、
もう少し安心して死ねる人も増えるだろうな。
後に残ってしまう人や物事のことを心配しなくてすむし。

いや、知ってるときついか。
もっと死ぬのが怖くなるか。
どうして生きるのか、考えちゃうか。
自暴自棄になっちゃったりするか。

知らない方がいいかも。

そうだな。
知らない方がいい。






「オマエダケダヨ、バーカ」
神様は爆笑した。