「目が合う程に」





僕には家族がいた





仲のいい両親

頼りになる兄奇麗な姉

かわいい双子の弟と妹

物静かな祖父と活発な祖母





ある日

そんな家族などいない事を知った





その家族がいるのは僕じゃなくて彼だ





彼は僕

僕じゃない

彼には家族がいる

仲のいい両親

頼りになる兄奇麗な姉

かわいい双子の弟と妹

物静かな祖父と活発な祖母





それらの家族がいるのは僕じゃない

彼だ











鏡の中の彼





僕は彼が羨ましくなり、鏡を拳で殴った

拳は血だらけになり、鏡に落ちた





僕じゃない

彼の血だ





手首にまで達したその傷は

彼の生命をもおびやかした





でも僕は助けない

ざまあみろとすら思っている

彼が死んでも、家族が僕のモノになるわけではないのだけれど

それでも僕は彼には死んで欲しいと願っている





鏡が割れてしまった今

彼の安否を確認する事は出来ないけれど

『きっとヤツは死ぬぜ』と思いながら少し咳をする



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